病院からのお知らせ

長野日報連載リレーコラム「おらほの病院」⑦が掲載されました

長野日報 朝刊(毎月第1日曜日)での連載 諏訪中央病院リレーコラム『おらほの病院』
7回目となるコラムが3月5日(日)の朝刊に掲載されました。
引き続き、産婦人科の鈴木靖子医師によるコラムです。

ご覧になれなかった方は、ぜひ以下よりご一読ください!
(出典:長野日報3月5日(日)掲載分(転載の許可を得ています))


諏訪中央病院リレーコラム
おらほの病院 ~あたたかな医療をめざして~ 第7回

 「子宮にまつわる話」
  産婦人科医長 鈴木靖子
 

普段、皆さんがあまり足を踏み入れることのない、めくるめく産婦人科の世界を、これまで6回にわたって語らせていただきました。そろそろ次の書き手の方にリレーのバトンを渡そうと思っていた矢先に、外来で何人かの患者さんから「え、そんな治療、初めて聞きました。」といわれたので、まだ長野県であまり知られていない治療をふたつお伝えしたいと思います。

【子宮頸部蒸散術】

これは子宮頸がんになる手前の状態の、子宮頸部異形成という状態の方に行われる手術です。この異形成は、症状が軽い順に軽度・中等度・高度に分けられます。軽度は自然に治る方も多いため、とくに治療はせずに定期観察をします。中等度からは少し治りにくくなり10人中6人はそのまま中等度の状態が続き、その6人のうち2人は何年かかけて高度異形成に進行していきます。高度異形成は、初期がんの一歩手前の状態のため、病変部を含めた子宮の出口を1~2cm切り取る、子宮頸部円錐切除術という手術が必要になります。

ご紹介する蒸散術というのは、切除はせず病変部の表面を深さ3mmくらい、レーザーなどを用いて焼灼する手術です。どこも切らないため、手術後の出血や早産などの危険性がなく、円錐切除よりも身体の負担の軽い治療になります。中等度異形成が続いている方がこの手術の適応になります。この手術をすると、大部分の方がいったん正常な状態に戻ります。そしてそのまま再発しないことも多いですが、なかには軽度異形成から再発してくることもあるので手術後も定期検査は必要です。再発の予防には、喫煙や偏った食生活、夜更かし、過労をさけることが大切です。特に喫煙は異形成や子宮頸がんと深い関わりがあります。

中等度異形成は治りにくいため、定期通院が長くなり、何回も精密検査になり痛い思いをしている方も多いようです。長野県ではあまり知られていないようですが、神奈川や東京では広く行われている治療で、ただ待つよりは、早めに簡単な手術をして治ったほうが不安がないという理由から蒸散術を選ぶ患者さんが多いようです。

【マイクロ波子宮内膜焼灼術】

 これは過多月経という、生理血が多くて漏れてこまったり、貧血で治療が必要になったりする病気の治療です。過多月経は病気でないと思っているかたも多いですが、職場や家庭での生活に支障が出たり、おむつタイプのナプキンを夜に使うようになったら、この手術を考えるタイミングかもしれません。

これもどこも切らずに治す治療で、腟から子宮の中に細い器具をいれて、子宮の内腔を丁寧に、深さ6mmずつ、マイクロ波というもので焼灼します。手術は40分程度です。筋腫などで生理が多くて、従来の治療で子宮摘出を勧められた患者さんのうち、3人に1人はこの治療で子宮をとらずに済むと思います。子宮の内腔の変形があまりに大きいとできませんが、是非一度、かかりつけの先生に相談してみてください。5年前までは先進医療でしたが、今は一般の保険医療になっています。ただ、妊娠に必要な内膜を焼いてしまうので、これからお子さんが欲しい方には向きません。子供を産み終えた40歳前後の方に一番向いている治療です。

今回は、まじめな話に終始してしまい、産婦人科医のよもやま話ができませんでした。次回、最後に一番言いたいことを言って、産婦人科連載を終えたいと思います。乞うご期待?!


次回は平成29年4月2日掲載予定です。

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