新年度にあたり、日々諏訪中央病院の診療を支えてくださっている地域住民の皆様、医療・介護・福祉施設関連の皆様、そして諏訪中央病院組合の皆様に感謝を申し上げたいと思います。「新たな地域医療構想」が始まる本年度、諏訪中央病院が取り組むべき課題について述べたいと思います。

院長 佐藤 泰吾

「新たな地域医療構想」が動き出しています。「新たな地域医療構想のガイドライン」が厚生労働省から提示されます。
2040年、今から約15年後を想定した「新たな地域医療構想」は人口減少および生産年齢人口減少を背景としています。諏訪二次医療圏(諏訪地域6市町村)の人口は現在約18万5千人。2040年には16万人になる見込みです。医療に関していえば、2020年までに外来患者数や手術対象患者数はすでにピークを迎えており、2035年には入院患者数、救急搬送件数もピークを迎えます。急性期医療だけを念頭に置けばすでにそのピークを越えているものと考えられるのです。一方で在宅診療を必要とする患者さんは2040年まで増加の一途をたどります。このような医療需要の変化を念頭に置きながら未来を構想することが必要です。これから各地域で医療機関機能に注目しながら連携・再編・集約化などが検討されます。
地域における各医療機関は大きく3つの機能に分化していきます。3つの機能とは①急性期拠点機能(高度な救急疾患や手術の必要な患者さんを積極的に受け入れる病院機能)、②高齢者救急・地域急性期機能(これからも増加が予想される高齢者救急や地域の一般的な病気に対応する機能を備えた病院機能)、そして③在宅医療等連携機能(在宅で生活する患者さんを訪問診療や入院が必要な状況で快く引き受け、自宅での療養生活を積極的にサポートする病院機能)です。自分たちの病院がどのような役割を担うべきかを明確にしなければなりません。

「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」は、これから2040年までの時間軸の中で、様々な地域データや現場の現状を踏まえて、「諏訪広域圏域」「八ヶ岳西南麓圏域」「八ヶ岳西南麓在宅圏域①、②」(図1)という空間軸を設定し、問題設定と解決策の構想、そしてその実行を目指すための作業仮説でした。「諏訪広域圏域」では急性期拠点病院となりうる諏訪赤十字病院と協力しなければなりません。「八ヶ岳西南麓圏域」では高齢者救急・地域急性期機能を富士見高原病院と協力して守る必要があります。「八ヶ岳西南麓在宅圏域②」においては組合診療所群や訪問看護ステーションなどの取り組み通じて、地域の在宅支援診療所の先生方と協力をしながら在宅医療を展開しなければなりません。
空間軸については様々なデータから分析を行いましたが、時間軸についての検討は十分ではなかったと考えています。今回提示する「八ヶ岳西南麓地域医療構想2026」(リンク参照)はこの時間軸の検討も詳細に加えています。今から15-20年後にひかえる諏訪地域の病院建て替えの問題なども念頭に置く必要があります。15~20年後の未来像を、これから5年間の時間軸で「新たな地域医療構想」に取り組むことを通じて鮮明にし、そこから逆算する形でこれから10年間の時間軸における日々の決断を求められます。そして15~20年後の未来とその建築物によって規定されるこの地域の医療・介護・福祉の体制の礎を築いていかなければならない(バックキャスティング)と考えています(図2)。このような重層的時間軸の把握が求められてきます。
「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」
「八ヶ岳西南麓地域医療構想2026」
図1:「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」

図2:「八ヶ岳西南麓地域医療構想2026」

「八ヶ岳西南麓地域医療構想2026」を諏訪中央病院組合が未来へむけての議論と対話を積み重ねるための基礎資料として提示させていただきました。「新たな地域医療構想」という国の方針を引き受け、現場から時代が抱える課題を解決するための具体的方法を提示し、この社会が未来にむけて変化しながら継続していくことの礎を作り上げることを目指したいと考えています。この作業は長く重層的な時間軸のなかで行われます。つまり世代を超えてバトンを手渡しながら行われる作業となるのです。
この作業は医療機関だけではできません。地域住民の皆様、医療・介護・福祉施設関連の皆様、そして諏訪中央病院組合の皆様とともに作業仮説を提示、更新しながらともに対話を積み重ねていく必要があります。
住民の生活を守ることが私達の最も大切な使命です。そのために教育や医療という社会的共通資本を守り続けていかなければなりません。続くためには変化を恐れてはならないと考えています。未来の住民の生活を守るために私達は変わることができるか、そのことを問われる1年間になると考えています。
皆様方のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。